導入事例:第6回 世界外傷学会(WTC2023)
【イベントレポート】国際学会の舞台で医療教育VRの最新事例を発表!「第6回 世界外傷学会(WTC2023)」におけるVRセミナーの様子をレポートします
AMED研究事業
世界外傷学会(World Trauma Congress)は、世界各国の外傷診療を研究する学会(26学会)が、2年おきに一堂に会し、外傷の診療・教育・システム・データの収集/分析・最新の研究に関する討論や研究発表が行われる学術集会です。
今回、2023年8月9日〜12日に日本で開催された「第6回 世界外傷学会(WTC2023)」において、ジョリーグッド共催によるVRセミナー「360度実写VR映像で学ぶ、外傷蘇生と緊急手術 〜臨床実習を補完する医療教育VRの最新事例」が実施されました。その様子をダイジェストでご紹介します。
本セミナーは、ジョリーグッドが採択されたAMED研究事業「外傷診療におけるVR遠隔臨床学習プラットフォームの構築」にかかる内容となります。
VRセミナー概要
テーマ:
Learn with 360-degree live-action VR video
Trauma resuscitation and emergency surgery
--The latest case study of VR in medical education that complements clinical practice
360度実写VR映像で学ぶ、外傷蘇生と緊急手術〜臨床実習を補完する医療教育VRの最新事例
開催日:2023年8月10日
会場:京王プラザホテル コンコードボールルーム(東京都新宿区⻄新宿2ー2-1)
[演目]
①The Revolution of Clinical VR - Trauma Case in Hybrid Emergency Room 臨床VRの革命--ハイブリッド救急外来での外傷手術(東北大学病院 高度救命救急センター)
②VR experience of burr hole surgery for acute subdural hematoma in the emergency room--救急外来での急性硬膜下血腫バーホール手術のVR体験(国際医療福祉大学成田病院 救急科)
[登壇者]
座長:内田健一郎(大阪公立大学大学院医学研究科 救急医学)
演者:谷河 篤(東北大学病院 高度救命救急センター)
演者:末廣 栄一(国際医療福祉大学医学部 脳神経外科)
開場前に入念な事前準備
開場1時間前、控室では登壇者である先生がたとジョリーグッドのスタッフが最終ミーティング。台本の読み合わせやVR映像投影の手順確認など、入念な事前準備を行いました。
開催前の最終打ち合わせに臨む末廣栄一先生、内田健一郎先生、谷河篤先生(左から)。
ランチョンセミナー形式で開催
今回のVRセミナーは、ランチをとりながら聴講するランチョンセミナー形式で開催されました。国際学会であることからベジタリアン向けのランチも用意され、たいへん好評でした。
さまざまな国籍の来場者のためにベジタリアン用ランチを準備。
VRゴーグルを100台同時接続
会場にはVRゴーグルを100台用意。VR体験に備え、来場者には講義開始前にランチをとっていただきました。
これまでのセミナー同様、会場には100台のVRゴーグルを用意。
医療教育VRの最新事例を国際学会で発表
国際学会での貴重なセミナーの座長を務めてくださったのは、ご自身も積極的に医療教育VRの制作に携わっておられる大阪国立大学大学院医学研究科救急医学の内田健一郎先生です。
座長を務められた内田健一郎先生。
内田先生はイントロダクションとして、重症の外傷患者の蘇生は分単位での緊急性を伴うものである一方、緊迫した状況下では臨床教育の実施が非常に難しいものであるとスピーチ。「低血圧を伴う出血性ショック外傷患者は、蘇生室での滞在時間が3分のびるごとに死亡率が1%増加する」というショッキングな引用を聞き、来場者も厳しい面持ちに。その後も終始スムーズな進行と的確なコメントで、来場者の理解を促してくださいました。
内田先生よりAMED研究事業についての紹介も行われました。
最初の登壇者は、AMED実証協力施設の一つである東北大学病院高度救命救急センターの谷河篤先生。この学会のために制作された最新のVRコンテンツにより、東北大学病院が誇るハイブリッド救急外来「iTUBE(アイチューブ)」での外傷手術の様子を来場者に体験してもらいました。
最初に講義を行ってくださった谷川篤先生(壇上中央)。
東北大学病院の「iTUBE」は、CTや血管撮影装置と手術室機能を備え、一刻を争う重症救急患者に“ひと”と“もの”を集中して短時間で治療を行う初期治療室です。「iTUBE」における処置の様子をVRでリアルに体験することで、チームとしてどのように動いているかを把握することができ、医学生やレジデント、新人医師などにとって非常に有益な研修ツールになるという谷河先生の言葉に、来場者も深く聞き入っていました。
東北大学病院のハイブリット救急外来「iTUBE」をVRで体験し、来場者も思わず治療室の様子をさまざまな角度で確認。
次に登壇されたのは、同じくAMED実証協力施設の一つである国際医療福祉大学医学部 脳神経外科の末廣栄一先生。救急外来におけるバーホール手術(ドリルで頭蓋骨に小さな穴を開けて行う手術)の様子を最新のVRコンテンツで紹介されました。
末廣栄一先生(壇上左)
重度の外傷性脳損傷の治療においては、手術室の準備に時間を要し、救急外来でバーホール手術を行う場合も少なくありません。技術的にはそれほど難しい処置ではないものの、経験不足から実施を躊躇している施設も多いと語る末廣先生。そこで有用と考えられるのが、救急外来でのバーホール手術を担当医の視点で体験できる医療VRです。末廣先生は、「手術の手順やポイントをリアルに体験することができ、教育面での価値が非常に高いと考える」と語ってくださいました。
救急外来ならではの緊迫感に満ちたVRコンテンツを体験し、来場者の皆さんも釘付けに。
パネルディスカッション
(内田先生)「救急外来ではチームマネジメントが非常に重要になってくると思いますが、その面でVRはどのような意味を持ちますか?」
(谷河先生)「そのとおりです。とくに外傷医学においては、テクニカルスキルのみならず、ノンテクニカル・スキル(コミュニケーションや状況認識、意思決定など)が大きな意味を持つのですが、2Dではその部分を学ぶことが難しく、VRで状況を学習することが非常に役立つと考えています」
(来場者の質問)「VRコンテンツを体験し、非常に興味を持ちました。手術の様子を撮影する場合、カメラはどのようなポジションに配置するのがよいでしょうか?」
(末廣先生)「やはり患者さんの上、センターの高い位置に置くのがベストではないかと思います。今回の映像では、医療スタッフがカメラの前に入ってしまい、術野が撮影できていない場面が多少ありましたので、私たちも次回は改善したいと考えています」
(内田先生)「今回は谷河先生、末廣先生より非情に興味深い講義をお聞きすることができました。世界では戦地での医療現場を再現したVRを研修に活用している国もあるようです。VRは医療を学ぶ多くの人にとってサスティナブルな教育の機会になると考えます」
内田先生のすばらしい締めくくりで、すべて英語で進行された今回のセミナーも無事に閉会となりました。さまざまな国からの参加者がアンケートにも快く答えてくださり、今後の取り組みに役立てたいと考えています。