【Doctor's Story】ベースとなるのは人間性。ちょっとした配慮が災害現場で大きく生きる。
導入実績 — 医療教育

【Doctor's Story】ベースとなるのは人間性。ちょっとした配慮が災害現場で大きく生きる。

【Doctor's Story】ベースとなるのは人間性。ちょっとした配慮が災害現場で大きく生きる。

2024年2月、京都市勧業館みやこめっせで「第29回日本災害医学会総会・学術集会」が開催されました。ジョリーグッドではVRセミナー「災害医療教育VRがつなぐ多方面連携の新たな可能性」を共催。登壇者のお一人として「PAT法を用いた医療テント内での二次トリアージ」をテーマとするVRコンテンツをご紹介くださった独立行政法人 国立病院機構 災害医療センターの佐野剛志先生に、VRコンテンツ制作で苦労された点や、災害専任看護師の業務などについてお話を伺いました。

ランチョンセミナーでは二次トリアージを取り上げたVRコンテンツをご紹介いただきましたが、PAT法のプロセス一つひとつの動きが分かり、全体の流れもリアルに感じられました。非常に高い学習効果が期待できると思いますが、作成されるにあたってはご苦労されたのではないですか?

佐野剛志先生(以下佐野先生)そうですね。やっぱり、柱といいますか、コンセプトをしっかり立てないとVRの良さというものを引き出せないと思いますので、VRにする意味をしっかり考えて作成することが一番大変だったかなと思います。

動画に登場してくださった方々の感想はいかがでしたか?

(佐野先生)彼らには真っ先に見てもらったんですけど、「作ってよかった」と喜んでくれましたね。すごく臨場感もあるし、学習効果も高いんじゃないかと言っていました。

災害医療は、医療従事者も実際に現場で訓練するということが不可能に近いわけですから、熟練者の手技を擬似体験できるのは非常に価値がありますね。

(佐野先生)そうなんです。災害医療の研修は本当に準備が大変ですし、協力者を集めるのもなかなか能力を必要としますので、VRによる研修はとても有用です。特に、何回も何回も見ることができるというのが、大きな強みですね。

先生のVRでは、実際にPAT法による二次トリアージを行う実施者目線と、全体を俯瞰して見ることができる第三者目線、二つの目線でプロセスを擬似体験できるのが大きな特徴だと感じました。

(佐野先生)触診する際の力の強さはどれぐらいか、患者さんへはどう問いかけているのか、看護師の視線はどこにあるかなど、すべての要素を一度の動画で把握することはできませんから、見るたびに目線や注目点などを変えて学んでもらえると、良い学習効果が上がるのではないかと思います。

「普段行っていないことは災害時にもできない」をモットーに災害専任看護師として活動

佐野先生が所属されている独立行政法人 国立病院機構 災害医療センター(以下災害医療センター)とはどのような施設なのでしょうか。

(佐野先生)災害医療センターといっても災害医療だけを行っているわけではないんですよ。東京・北多摩西部医療圏において、救急診療と一般的な総合診療を担うとともに、日本の広域災害医療の基幹施設として、広域災害発生時に行政と連携して災害医療の中心となることが求められています。日本DMAT登録隊員数も全国一で、日本DMAT・東京DMATの研修機関ともなっていますし、私自身もDMATの一員として活動しています。

先生は災害専任看護師として活動されていますが、一般には聞き慣れないお仕事ですよね。

(佐野先生)そうかもしれませんね。災害専任看護師は、院内の災害看護研修や災害訓練の企画・運営、看護学校の講義、災害専門看護師の実習指導などを行うのが業務です。比重としては災害に関わる仕事がほとんどなんですが、臨床の肌感覚というものを忘れないよう、時間があるかぎりは救命救急病棟での臨床の仕事もしています。

セミナーでも「普段行っていないことは、災害時にもできない」とおっしゃっていましたね。

(佐野先生)はい、それをモットーに、平常時は他の看護師と同様に病院で勤務し、実際に災害があった場合はすべてそちらにシフトして活動します。

センターには何人の災害専任看護師さんがいらっしゃるんですか?

(佐野先生)じつは私一人だけなんです。特に資格が必要というわけではないのですが、災害医療の知識や経験、地域の災害対策や保険医療といったところを熟知している看護師が推薦を受けて災害専任看護師の任務に就くというかたちです。

そもそも佐野先生はどういったことから看護師を目指されたんですか?

(佐野先生)きっかけは高校生の頃に大きな怪我をしてしまったことなんです。大学進学も就職もその時点ではちょっと難しいかな、という状態になってしまった時に、入院中にお世話になった看護師さんの姿にとても影響を受けまして。本当にとても優しかったんですよ、看護師の皆さんが。それで、自分もその道に進みたいと思い、看護学校に進みました。

その時点で災害医療を目指されていたんですか?

(佐野先生)いえ、それは看護師になってからですね。ただ、私が小学生の頃に、阪神淡路大震災が起こりまして、救助活動を行っている自衛隊の様子をずっとテレビで見ていたんですね。それで、いずれは自衛隊に入隊して災害救助に関わりたいと思うようになったのですが、高校生の時に怪我でその夢が叶わないということになってしまって。ところが、看護師になってたまたま災害医療センターという病院があることを知り、災害医療という領域があるのならそちらに携わりたいと考えて入職を希望しました。

子どもにとって災害の映像は大きなインパクトを残すものですが、佐野先生にとってはそれが災害医療の道へとつながっていったわけですね。災害医療センターに入られてから、最初に災害現地に行かれたのはいつになりますか?

(佐野先生)2014年の御嶽山の噴火災害が最初でしたね。それまでDMATは地震災害での派遣実績しかなかったので、噴火災害ではそれが初めての派遣でした。

そうだったんですか! そういった厳しい現場でも経験を重ねていくことで、災害専任看護師としての力が備わっていったのですね。

(佐野先生)そうですね。ただ、それを後進の育成にどうつなげるかというと、なかなか難しいんです。当院は名前の通り災害医療に特化した病院ですので、そういったことを志してくる職員は非常に多いのですが、その人たちをどう育てるかというのは常に課題となっています。私としては、やはりベースとしては人間性の部分が非常に重要だと思いますので、そういったベースになるところをしっかり育てられるように心がけています。

押し付けの支援ではなく、お互いに尊重しあえる関係性作りを目指す

能登半島地震ではかなりの数のDMATが現地に入ったとお聞きしましたが、若手の看護師さんたちも参加されたんですか?

(佐野先生)はい。チーム構成としては、実際に災害現場を経験しているスタッフと、経験をしたことのないスタッフを1チームに組んで、サポートし合えるような環境で派遣するというかたちをとっています。おそらくDMATのイメージというと、レスキュー隊と一緒にトリアージや救命搬送を行う、コードブルーのようなイメージがあると思うんですけども、実のところは、病院や対策本部をしっかり支えてあげるということが最優先なんです。実際私も能登では金沢市の県庁に入って本部支援をさせていただきました。

震災ではそういった機能もなかなか機能しなくなってしまうということですね。

(佐野先生)医療従事者も被災しているわけですし、そもそも自治体にも災害に関する経験がない場合がほとんどですから、もう大パニックになります。やはり行政は縦割りの面も多く、なかなかスムーズな流れを作りにくいんですね。そういった中で我々が間に入り、少しでもサポートできるように動くわけです。

セミナーでもおっしゃっていましたが、地域との連携やコミュニケーションが重要になってくるんですね。

(佐野先生)支援者が「支援に来ているんだ」っていう使命感をあまり持ちすぎると、押し付けの支援になってしまうんです。スタッフにもよく言うのですが、そこで何ができるかをまず考え、医療に限らずできることは何でもやる、という姿勢が非常に重要だと思っています。行政の人たちも現地の医療従事者も皆さん被災者ですから、一言ひと言にしっかり配慮しながら、相手をねぎらい、仲間としてお互いにしっかり尊重し合えるような関係性作りが何より大切です。

そういった点で、先ほどおっしゃっていた人間性というところが災害医療の基礎になっていくわけですね。

(佐野先生)本当にそのとおりです。災害医療のスキルだけでなく、ちょっとした配慮をしっかりできるような人間性を育むことは、非常に大きな課題だと思います。

まさに「普段行っていないことは災害時にもできない」ということですね。ただ、災害専任看護師として若いスタッフの育成を担うというのは、責任が重い部分もあるのではないでしょうか。

(佐野先生)そうですね。私自身、人前で喋るのが全く得意ではないので、正直なところ今日のようなセミナー登壇もあんまりやりたくはなくて(笑)。ただ、災害専任という責務を全うし、災害医療センターという名前をしっかり世の中にアピールするためにも、ここで踏ん張らなきゃと思っています。

災害医療センターの認知を高めることは、一般の方たちの災害医療に対する認知を高めることにもつながりますね。

(佐野先生)そうですね。我々の役割であったり姿勢であったりを知っていただけるだけで、現場の流れが良くなる場合もありますので、ありがたいですね。最近DMATという名前も知られてきていますけれど、やはりまだ最前線に行くようなイメージが強く、先ほどお話ししたような医療機関や行政のサポートといった部分でも活動はまだあまり認知されていないと思うんです。それを認知しきれてない部分があると思いますので、とくに行政の方たちに知っていただければ、いざという時に現地でスムーズにお手伝いができるのではないかと思います。

日常業務でも災害時でも、やりがいとともに重責を担っておられる佐野先生ですが、リフレッシュできる時間はありますか?

(佐野先生)うーん、やっぱり家族と過ごすことですかね。子どもが今10歳と2歳なので、みんなで団欒している時がいちばんリラックスできます。

じゃあ上のお子さんはお父さんのお仕事が分かる年齢ですね。憧れたりするんじゃないですか?

(佐野先生)一応「看護師になりたい」とは言ってくれていますね。でも、自分の子どもには「大変だからやめておいたほうがいいよ」なんて思っちゃうんですよね(笑)。

私にとっての『ひらけ、医療。』とは

ジョリーグッドでは現在、あらゆる場所に医療がある未来をつくっていくプロジェクト『ひらけ、医療。』を展開しています。佐野先生にとっての『ひらけ、医療。』とはどのようなものでしょうか。

(佐野先生)私が考える『ひらけ、医療。』とは、「誰でもベテランナース」ということです。

(佐野先生)未来につながる医療教育を考えるうえで、VRは不可欠だと思います。VRを活用することで、ベテラン熟練者の手技が実際に疑似体験できますので、自分との違いが明確に分かり、それを自己課題や目指すべきところに繋げられるのではないかと思います。誰でもベテランナースになれる近道がVRによって拓かれ、より多くの患者さんにより良い医療をお届けできることを願っています。

【プロフィール】

独立行政法人 国立病院機構 災害医療センター 災害専任看護師。 2007年、独立行政法人国立病院機構 災害医療センター入職(循環器内科、心臓血管外科病棟)。2012年、同センター 救命救急病棟。2016年、同センター 副看護師長(消化器内科、形成外科病棟)。2022年、同センター 災害専任副看護師長(救命救急病棟)。日本DMATインストラクター/東京DMATインストラクター。

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