導入事例:第29回 日本災害医学会総会・学術集会
【イベントレポート】災害医療の多方面連携にVR教材を活用「第29回 日本災害医学会総会・学術集会」ランチョンセミナー
【イベントレポート】災害医療の多方面連携にVR教材を活用「第29回 日本災害医学会総会・学術集会」ランチョンセミナー
AMED研究事業
2024年2月22日〜24日の3日間、京都市勧業館「みやこめっせ」(京都府)で「第29回 日本災害医学会総会・学術集会」が開催されました。ジョリーグッドは展示ブースを出展するとともに最終日の24日にランチョンセミナー「災害医療教育VRがつなぐ多方面連携の新たな可能性」を共催し、多くの方々にご来場いただきました。
本セミナーは、ジョリーグッドが採択されたAMED研究事業「外傷診療におけるVR遠隔臨床学習プラットフォームの構築」にかかる内容となります。
VRセミナー概要
テーマ:災害医療教育VRがつなぐ多方面連携の新たな可能性
開催日:2024年2月24日
会場:京都市勧業館みやこめっせ(京都府)
[演目]
①PAT法を用いた医療テント内での2次トリアージ 佐野剛志(独立行政法人国立病院機構 災害医療センター 災害専任看護師)
②プロジェクトの基盤となるVR技術について(株式会社ジョリーグッド)
[登壇者]
座長:笠岡 俊志(熊本大学病院災害医療教育研究センター 教授・センター長)
演者:佐野 剛志(独立行政法人国立病院機構 災害医療センター 災害専任看護師)
演者:上路 健介(株式会社ジョリーグッド代表取締役CEO)
災害医療体制のさらなる向上を目指し、叡智を結集
日本災害医学会は、1995年日本集団災害医療研究会として発足し、2018年より現在の名称に変更。5,000名以上の会員が所属し、災害時における様々な問題点の解決を目的に、医療関係者のみならず消防、防災行政、研究者など多領域の研究者が災害医学・災害医療に関して協議を図る場となっています。
今回の総会・学術集会は、各機関・団体が京都の地に一堂に会し、災害医療にかかわる叡智を結集し、災害医療体制のさらなる向上を目指すという目的のもと、「叡智の結集--すべては被災者のため--」をテーマに開催されました。
今年は元旦にマグニチュード7.6、最大震度7を記録する能登半島地震が発生したこともあり、災害医学・災害医療への関心はいっそう高まっています。開催地となった京都市勧業館「みやこめっせ」は大勢の来場者で賑わい、ジョリーグッド共催のランチョンセミナーにも開場を待つ人たちが長い列を作りました。
セミナーには早くから多くの来場者が並び、スタッフは対応に追われました。
開場を前に、控室では登壇者である先生がたとジョリーグッドのスタッフが集まり、台本の読み合わせや時間の配分などの最終ミーティング。一方、会場には100台のVRゴーグルを用意。1台でも不具合が起こらないよう、入念な動作確認を行いました。
控室ではセミナー登壇者が揃い、時間の配分をすり合わせるなど、進行を一つひとつ確認。
スタッフはセミナーで使用するVRゴーグルの最終チェック。
ジョリーグッドの新しいプロジェクトを紹介
今回座長としてセミナーを進行してくださったのは、熊本大学病院災害医療教育研究センター教授・センター長の笠岡俊志先生です。
座長を務めてくださった熊本大学病院災害医療教育研究センター教授・センター長の笠岡俊志先生。
笠岡先生ご自身も、地震脱線事故の救急対応をVRで学習するコンテンツを制作されるなど、医療教育へのVR導入に積極的に取り組んでくださっています。
セミナーではまずジョリーグッド代表取締役CEO上路健介より、医療教育VRの基盤となるVRテクノロジーのご説明、および医療VRコンテンツが定額で体験し放題のサブスクリプションプラットフォーム「JOLLYGOOD+」についてご紹介させていただきました。また、上路はApple社のゴーグル型VR端末「Apple Vision Pro」に対応した空間コンピューティング向けイマーシブ医療サービス「JOLLYGOOD+ for Vision Pro」の開発についてもご紹介。来場者は非常に興味を引かれている様子でした。
上路よりジョリーグッドのVR技術とサブスクリプションプラットフォーム「JOLLYGOOD+」について紹介させていただきました。
災害現場を擬似体験できるVRを災害看護教育に活用
次に登壇されたのは、独立行政法人国立病院機構 災害医療センターの佐野剛志先生です。災害専任看護師であり、災害派遣医療チーム「DMAT」の一員として活動をされてきた佐野先生は、災害医療・災害医学におけるさまざまな課題解決にはVRが有用であると考え、コンテンツ制作に取り組んでおられます。
PAT法による二次トリアージを再現したVRコンテンツをご紹介くださった独立行政法人国立病院機構 災害医療センター災害専任看護師の佐野剛志先生。
今回佐野先生がご紹介くださったのは、「PAT法を用いた医療テント内での二次トリアージ」をテーマとするVRコンテンツです。災害などで多数の傷病者が発生した場合に傷病の緊急度や重症度に応じて治療優先度を決定する「トリアージ」には、現場において30秒ほどの短時間で緊急度を判断する一次トリアージと、そこで大まかに分けられた患者を生理学的および解剖学的な観点から細かく分類する二次トリアージがあります。二次トリアージには一般的にPAT法と呼ばれる評価方法が用いられるのですが、解剖学的な部分では外傷などの専門的な知識や手技も必要とされ、教科書での座学だけではなかなか習得しきれない部分もあります。
そこで佐野先生は、傷病者の搬入から生理学的評価、解剖学的評価、そして総括というPAT法の一連の流れをVRで再現。実際にPAT法を行う実施者目線と、全体を俯瞰して見ることができる第三者目線、二つの目線での動画を作成し、教材として活用しています。
実施者目線では熟練者の手技や患者への問いかけ、立ち位置などを学ぶことができ、第三者目線ではトリアージを行う現場の様子や他スタッフとの連携、一連の流れを学習しやすいと、佐野先生はそれぞれのVR動画の利点を語ってくださいました。
セミナーでは、災害時の医療テントに傷病者が搬入され、PAT法の解剖学的評価で開放性気胸と判断されるまでを実施者目線のVRで紹介。丁寧かつ迅速に一つひとつのポイントを確認していくプロセスをリアルに擬似体験することができ、来場者もさまざまな角度に顔を動かしながら見入っていました。
二次トリアージの緊張感ある再現VRに見入る来場者の皆さん。
再現することが難しい災害現場をVRで擬似体験することで、実践的な教育と学習効果の向上、熟練者の手技の体得などといったメリットが期待できると佐野先生。今後も災害看護においてVRを積極的に活用していきたいと締めくくりました。
「今後も新たなVR教材の作成に取り組んでいきたい」と語ってくださった佐野先生。
災害医療教育と医療VRの未来についてディスカッション
続いて登壇者全員によるディスカッションを実施。災害現場でのDMATの活動や、災害医療教育の課題、医療VRの有用性などについて忌憚のない意見を交換しました。
座長の笠岡先生からは、DMATの活動はトリアージなどの緊急性の高いものだけでなく、被災地の医療チームや行政と連携し、機能低下に陥っている医療を支援することなども大きな役割だというお話がありました。
一方、実際に災害現場を経験している医師や看護師は限られており、今回の能登半島地震では1,000を超えるDMATが派遣されているが、すべてのメンバーが経験者というわけではないと笠岡先生。そこに災害医療教育の難しさが感じられます。
来場者からの質問もあり、活発な議論が展開されたディスカッション。
それに対し佐野先生は、他職種、多方面との連携が必要とされる災害現場では、日頃からのコミュニケーション力や人としての姿勢が非常に重要になってくると発言。また、非日常の特殊な場面では通常であればできることがスムーズに進まないことも多々あるため、手技にとどまらず人としての経験値を引き出しに蓄えておくことが肝要だと話されました。
「他職種との連携という意味では看護師さんがいろんな人の間に入って苦労されそうですね」という上路の質問に、「はい、常日頃から間に入っています(笑)」と佐野先生。「そこでのコミュニケーション技術というのは看護師の強みだと思っています」と笑顔で返答されていました。
笠岡先生、佐野先生はお二人とも1月の能登半島地震でも被災地に駆けつけて活動されており、説得力のあるお話に来場者も深く聞き入っていました。さらに会場からの意見を募ったところ、「災害現場で安全をどう確保すればよいか、擬似体験できるVRをつくってほしい」「地震の概念がない外国人が被災する場合もあり、地震とはどのようなものかをリアルに伝えることはできないか」といった声が上がり、登壇者の皆さんが「なるほど」とうなづくシーンも。短時間ながら充実したディスカッションとなりました。
最後に上路から、ジョリーグッドが新たに発足させたプロジェクト『ひらけ、医療。』について紹介をさせていただきました。人口の約30%が65歳以上となり、高齢化社会が進むことによって医療費や介護費が増大する一方で医療資源が逼迫する「2025年問題」、さらにその状況が深刻化する「2040年問題」という課題を抱えながら、他領域に比べDX化が著しく遅れている日本の医療。その現状を踏まえ、「誰もが医療に参加し、あらゆる場所に医療がある未来」をつくっていくプロジェクトです。
【プロジェクトサイト】
https://jollygood.co.jp/hirake-iryou
満員の来場者を迎え、無事閉会となった今回のランチョンセミナー。別のフロアに設けたジョリーグッドの展示ブースにもたくさんの方が訪問、VRゴーグルを体験し、「ひらけ、医療。」の資料を手に取ってくださいました。 災害大国と呼ばれる日本にあって、これからの災害医療・災害医学はどう進化するべきか、そこにVRはどう貢献できるのか。来場者の皆さんの大きな関心と期待を実感することのできた学会となりました。