導入事例:第27回日本病院総合診療医学会 学術総会
【イベントレポート】医療教育におけるVRの有効性をさまざまな角度で検証。「第27回日本病院総合診療医学会 学術総会」におけるVRセミナーの様子をレポートします
AMED研究事業
総合病院においてプライマリ・ケアに加え医療機器を使用して診断を行うのが「病院総合診療医(ホスピタリスト)」です。「日本病院総合診療医学会」では、2023年8月26日(土)~27日(日)の2日間、「第27回日本病院総合診療医学会学術総会」を開催。「Society 5.0における総合診療」をテーマに、さまざまなシンポジウムや講演、セミナーが行われました。
ジョリーグッドはこの学会において、VRセミナー「実患者症例VRで学ぶ 臨床推論と診療技術」を共催いたしました。その様子をダイジェストでご紹介します。
本セミナーは、ジョリーグッドが採択されたAMED研究事業「外傷診療におけるVR遠隔臨床学習プラットフォームの構築」にかかる内容となります。
VRセミナー概要
実患者症例VRで学ぶ 臨床推論と診療技術
開催日:2023年8月26日
会場:日本医科大学 橘桜会館 橘桜ホール(東京都文京区向丘2丁目20−7)
[演目]
①経験知を集合知に変える−−医療教育VRプラットフォーム構築の取り組みについて(株式会社ジョリーグッド 魚住栄雄)
②院内教育におけるVRの有効性(日本医科大学付属病院 総合診療科 松田直人)
③VRコンテンツを用いた教育方法(順天堂大学医学部 総合診療科学講座 森 博威)
[登壇者]
座長:内藤俊夫(順天堂大学大学院医学研究科 総合診療科学)
演者:松田直人(日本医科大学付属病院 総合診療科)
演者:森 博威(順天堂大学医学部 総合診療科学講座)
演者:魚住栄雄(株式会社ジョリーグッド)
スムーズな進行に向け、念入りに打ち合わせ
セミナーの会場は日本医科大学の橘桜会館。さまざまなセミナーや講義が次々に開催される中、控室では登壇者である先生がたとジョリーグッドのスタッフが集合し、本番前のミーティングを行いました。タイムテーブルの最終確認や台本の読み合わせなど、スムーズな本番進行に向けて詳細な打ち合わせが続きました。
セミナー開催前の打ち合わせを行う松田直人先生(右)、森博威先生(中央)。
一方、VRゴーグルは100台を用意。問題なく作動するかどうか、スタッフは一台一台しっかりチェックを行い、会場に準備しました。
会場には100台のVRゴーグルを用意。
テーマは総合診療医学教育におけるVRの有効性
今回セミナーの座長を務めてくださったのは、ご自身も積極的に医療教育VRの制作に携わっておられる順天堂大学大学院医学研究科 総合診療科学の内藤俊夫先生です。登壇者の松田直人先生、森博威先生とは旧知の仲ということもあり、和やかな雰囲気の中でセミナーをスタートさせてくださいました。
座長を務められた内藤俊夫先生(右)。
まず冒頭にジョリーグッドの魚住栄雄より、300以上の医療VRコンテンツが定額で体験し放題のサブスクリプションプラットフォーム「JOLLYGOOD+」と、高精度VRカメラにより多種多様な医療VRコンテンツをセルフ制作できるVR制作ソリューション「JOLLYGOOD+make」について紹介させていただきました。
セミナーの冒頭、ジョリーグッドの医療教育VRについて魚住栄雄より紹介。
次に、ジョリーグッドのAMED事業に当初より深く関わっておられる日本医科大学付属病院総合診療科の松田直人先生が登壇。「院内教育におけるVRの有効性」をテーマに、松田先生が考えるVR活用のメリットや、院内教育用に制作されたオリジナルVRコンテンツを紹介していただきました。
松田直人先生は総合診療科でのVRの活用方法について提案。
松田先生が所属する日本医科大学付属病院の救急・総合診療センターは1次・2次救急に対応しており、常に幅広い症例の診療を行う場であると同時に、医学部学生・看護学生・研修医教育における実習の場でもあります。松田先生からはまず、総合診療科がどのような教育上の特徴を持っているか、その中でどのようなVR活用方法を考えているかといった紹介がありました。
次に来場者は、「搬送されてきた気胸患者に対する問診や心電図・採血の手順」をVRで体験。さらに、研修医向けに制作された採血のVRコンテンツで、血管確保の失敗例と成功例を体験し、そのリアルな映像を真剣に見入っていました。
搬送患者に対する問診の様子や、採血の成功例・失敗例をVRで紹介してくださった松田直人先生。
診断における3例のコンテンツで利点と課題を紹介
最後に登壇されたのは、順天堂大学医学部 総合診療科学講座の森 博威先生。順天堂大学もまたジョリーグッドのAMED実証協力施設の一つとして、COVID-19をはじめとする感染症に携わる教育VRコンテンツ開発など、さまざまな共同事業を行っています。
森先生は、医療VRといえば手技を撮影するものというイメージが強いVRを、診断という領域でどう活用していくかというテーマのもと、3本のVRコンテンツを用意。「敗血症ショックの対応」「尿路結石の患者対応」「HIV患者への告知」の3例のコンテンツに対し、それぞれの利点と課題を紹介しました。
森博威先生
森先生は、医療教育においては、VR体験のみで完結させず前後のレクチャーやディスカッションを含めた医療教育プログラムを構築することが重要であると説明。「多くの患者さんを診てていねいに振り返るという、総合診断医にとって非常に重要な研修の一部をVRに置き換えることができるのではないかと期待している」と締めくくられました。
実は森先生のVRコンテンツには座長の内藤先生も登場。臨場感ある体験に思わず参加者も四方を確認。
活発なパネルディスカッションでセミナーは無事閉会
パネルディスカッションでは、セミナーをお聞きくださった千葉西総合病院総合内科の八重樫牧人部長から。
「医療教育は学習者がいかに納得できたかがその後の行動変容につながっていくと考えていますが、VRはその点で説得力が高いことを実感しました」
とのご意見が。
また、横浜市立大学附属市民総合医療センター 総合診療科の長谷川修先生からは、
「VR試聴後に、『あの点はあれでよかったのか』『ここはこうするべきでは』といったディスカッションを活発に行うことが重要であり、医療従事者の観察力と表現力を高めるためにもVRツールは非常に有効なのではないかと感じました」
とのご意見をいただき、座長の内藤先生が
「長谷川先生のような先輩方の知見を後進に受け継ぐために、VRコンテンツとしてアーカイブできるとすばらしいですね」 と希望を述べられるなど、活発なディスカッションが行われました。
最後に内藤先生より
「VRは本当にいろいろな未来が期待できる分野だと考えています。各大学各病院がばらばらに取り組むのではなく、みなさんのアイデアを一つにまとめて、協力しあって進めていければと思っていますので、よろしくお願いいたします」
と呼びかけがあり、セミナーは無事閉会となりました。
ディスカッションの中には「2DとVRのメリットを比較したい」「ゴーグルの進化に期待する」といったご意見もあり、さまざまなご要望に対し、ジョリーグッドもいっそう積極的に取り組んでいきたいと考えています。